- 日常生活で注意することはありますか?
圧迫を避ける: 時計、きつい服、腕枕(シャント肢を下にして寝ない)、かばん、採血、血圧測定などは避けてください。
傷つけない: ぶつけたり、転んだりしないように注意してください。爪が長いと、 無意識のうちにシャント部分を引っ掻いてしまい、傷から細菌が侵入する原因となります 。爪を短く切りましょう。
運動:シャントに直接体重をかけない限りは、運動を行なっても大丈夫です。
- シャントを長持ちさせるためにできることがあれば教えて下さい。
清潔を保つ: 毎日シャワーで洗い、清潔に保ってください。針穴保護のガーゼや絆創膏は翌日までに取り除いて下さい。(シャント血管への圧迫を避けることにもつながります)
皮膚の乾燥を防ぎ、保湿を心がける:皮膚が乾燥するとバリア機能が低下し、かゆみを引き起こしやすくなります。かゆみから皮膚を掻きむしると傷ができ、感染のリスクが高まるため、保湿ローションなどで皮膚を保護することが大切です 。
シャントの観察: シャント部分を毎日観察し、朝夕2回は耳を当てるか聴診器で音を確認しましょう。また、シャント部分に触れて拍動が正常に感じられるかの確認もしましょう。発赤、腫れ、痛み、しびれなどがあればすぐに相談して下さい。
- シャントの異常を見つけるためのサインは何がありますか?
患者さま自身がどのようなところに注意すればよいかを理解し、日々の観察を習慣化することが大切です。観察には見る、触れる、聞くの3つのポイントがあります。
見る:シャント肢(腕)の見た目の変化
シャント側の腕が浮腫んでいる、シャント部位が赤く腫れている 、痛みや熱感がある 、白い膿が排出されている (感染の可能性) 、シャント部位にコブ状の膨らみがある (瘤化の兆候) といった変化は、シャント異常のサインです。
触れる:スリル(シャントの振動)の確認
シャント血管に手を当てた際に指先に感じる「ジーッ」・「ざわざわ」とした振動がスリルです 。振動が弱くなったり、途切れ途切れになったり、部分的にしか感じられない場合、またはいつもと違う強さやリズムを感じる場合は注意が必要です 。 シャントが詰まっている場合は、その部分が硬くなり痛みを伴うこともあります 。
聞く:シャント音の確認
シャントに耳を当てるか、聴診器を当てて聞こえる血流音がシャント音です。正常なシャント音は低めの「ザーザー」という音が一定のリズムで聞こえる状態です 。「ヒューッ」や「ピーピー」といった高い音に変化する、音が小さくなる、音が途切れ途切れになる 、あるいは全くシャント音がしなくなるといった変化は、血流の異常、特に狭窄や閉塞のサインとして重要です。これらの変化が感じられた時は通院先または当院に相談して下さい。
- 手術後の入浴・シャワーはいつからできますか?
防水フィルムを貼付すれば当日からシャワーが可能です。浴槽での入浴も可能ですが、創部を浴槽に完全に浸けるのは術後1週間は控えて下さい。防水フィルムは剥がれるまでそのまま貼り替えなくても大丈夫です。温泉は不特定多数の人が利用し感染の可能性が高まるため注意が必要です。1週間経過すればフィルムは貼付なしでも大丈夫です。
- 手術後の仕事や学校はいつから復帰できますか?
回復状況や仕事・学業内容によりますが、手術部位に負担がかからないように徐々に復帰を進めるのが望ましいです。手術部位に負担がかかる激しい動きや接触は避けるべきですが、それ以外は問題ありません。
- 手術後の飲酒はしてもいいですか?
出血のリスク: アルコールには血管を拡張させ、血行を良くする作用があります。手術直後は傷口からの出血や内出血のリスクがあるため、飲酒によってこれらの症状が悪化する可能性があります。一般的には、手術当日と翌日の2日間は禁酒が推奨されています。
- 術後はいつから透析に使えるようになりますか?
自己血管内シャント(AVF:Arteriovenous Fistula)の場合
- 自分の血管を使うため、血管が十分に発達し、透析に耐えられるようになるまでに時間が必要です。この期間を「成熟期間」と呼びます。
- 一般的に、手術後2週間から4週間程度で透析に使用できるようになります。
- ただし、個人の血管の状態によっては、数ヶ月かかる場合もあります。
人工血管内シャント(AVG:Arteriovenous Graft)の場合
- 人工血管内シャントに使用する人工血管にはポリウレタンとPTFEがあります。ポリウレタンは手術後すぐに穿刺、透析に使えるようになりますが、PTFEは穿刺できるようになるまでに3-4週間かかります。
- 当院では穿刺部位には基本的にはポリウレタンを使うので、当日から使用可能です。実際にいつから穿刺するのかは透析施設の主治医、スタッフと相談して決めていただきます。