シャントについて

透析用シャント(AVF、AVG)について

腎不全について

腎臓の働きは、体内にある余分な水分、毒素、ナトリウムやカリウムを尿という形で体外に排出することです。腎臓の働きが悪化すると、これらが体内に溜まってしまいます。

水分やナトリウムが溜まりすぎると体、特に足がむくんでしまい、体重が何kgも増加します。毒素が溜まりすぎると食欲が低下したり、体が痒くなったりします。カリウムが溜まり過ぎると、力が入りにくくなったり、心臓のリズムが乱れ、最悪の場合は突然心臓が止まってしまうことさえあります。

腎臓の働きが不十分になり、血液検査の値が限界を超えたり、毒素などが溜まり過ぎていると判断されたら、透析治療を行います。透析とは腎臓の働きを機械に肩代わりさせることです。

透析には「腹膜透析」と「血液透析」があり、それぞれ利点・欠点がありますが、現在では9割以上の人が血液透析を行っています。血液透析では、血液に溜まった余分な水分、毒素、ナトリウムやカリウムを血液から取り出します。血液を体から吸い出して機械に通し、きれいになった血液を体に戻す治療です。

一般的には週に3日、1回4時間の治療を行います。血液を体から吸い出すのにも、体に戻すのにもそれぞれ針を刺すので、透析のたびに針を2本穿刺する必要があります。

透析に必要な血液量は個人差がありますが、一般的には1分間に約200mlとされています。血液検査などで針を刺す肘の太い静脈でも、これだけの血液を吸い出すことは不可能なため、「シャント」という仕組みが作られました。

シャントについて

シャントという言葉の意味は、元の流れとは別の経路に流すことです。洪水の多い河川の横に「放水路」を作ることも、ある種のシャントといえます。

透析シャントは「動脈→毛細血管→静脈」という本来の流れとは別に、「動脈→静脈」と毛細血管を経由せず、動脈から静脈へ直接血液を流す仕組みです。毛細血管は抵抗が大きいので、それを通さずに動脈と静脈を直結することで、血流の抵抗は劇的に低下し、通常の何倍もの血流が流れるようになります。

静脈に大量の血液が流れることで静脈が太くなります。この太くなった静脈に針を刺して血液を体外に吸い出したり、体に戻したりします。

血液透析を行う仕組みは、シャントの他にもカテーテル透析、動脈表在化などがありますが、現在、シャントは血液透析を行うために最も良い方法であるとされています。良い透析を行うためには良いシャントを作成することが大変重要です。

良いシャントができれば透析がスムーズに行えますが、逆にシャントに問題があれば、ただでさえ不安の大きな透析導入の時期に、手術への不安やシャントの痛みなどが加わり、透析に対して気持ちが後ろ向きになってしまいがちです。

透析シャントを作成するタイミングは主治医と患者で相談して決定し、手術を外科医に依頼しますが、血管の条件が良好であれば手術の技術力の差が出にくいため、内科医が手術を行うこともあります。

シャントには大きく分けて自己血管内シャント(AVF)と人工血管内シャント(AVG)があります。AVFは人工血管を使わないシャント、AVGは人工血管を使うシャントです。

両者の比較ではAVFの方がAVGよりもトラブルが少なく「良いシャント」と言えますが、条件の良い静脈がある人はAVFを作ることができます。ただし、静脈が細い人はAVFが作れなかったり、もし作成できても細い静脈に針を刺すのが難しかったり、なんとか穿刺できても十分な血流が取れなかったりして、AVGを作らざるを得ないことがあります。

AVFにしろ、AVGにしろ、患者さんが長期的に安定して、ストレスなく透析を受けられるようにするのが最終的な目標です。

名古屋アクセスクリニックの使命は「良いシャントを作り」「良いシャントを維持する」ことです。

もっと詳しく 1:AVFかAVGか

その人の静脈がAVFに適しているのか、AVGを作成するべきなのかを見極めるのは、時に難しく、「AVFが作れたはずなのに、診断が不十分でAVGを作成されてしまった」という患者さんに会うこともしばしばあります。

判断が難しい場合には、まずAVFを作る手術を行い、経過をみて、そのままAVFを使用するのか、AVFを断念してAVGに作り替えるのかを考える場合もあります。AVFを作って、さらにAVGに作り替えるとなると手術を2回も行うことになり、患者さんの負担は大きくなるため、このような2段階の治療戦略を選ぶ時には医師と患者で十分な話し合いを行い、理解し納得した上で選択することが重要です。

もっと詳しく 2:誰が手術を行うか

動脈、静脈ともに条件が良い場合、誰が手術をしてもあまり違いはなく、自宅の近くで手術を受けるのがよいでしょう。

ただ「あまり違いがない」とは言え、手術の痛み、手術の成功率について医師の技量による差はあるのが現実です。「医療広告ガイドライン」によって、どこの施設が良いとか悪いとは広告することはできませんが、「どこで治療しても同じ」という訳ではないことを理解してください。

特に「動脈が細い」「動脈硬化がある」「静脈が細い」「一度手術がうまく行かなかった」「人工血管が必要」といった状況では治療成績に差が出やすいように感じています。

血管外科は動脈、静脈の手術の専門家であり、透析シャントの造設には最も適した診療科です。しかし、血管外科と名前がついていても、心臓の手術が得意な医師もいれば、末梢血管の手術が得意な医師もいます。透析シャントの手術には、他の血管外科手術とは違う特殊な要素があるため、透析シャントの治療に精通した血管外科医が手術を行うことが最も適切であると思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA